現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。
「あなたにとっての宝物は何ですか」と聞かれたら、何と答えますか?
家族とか恋人とか友人とか、自分にとって大切な人はみんな、誰にとっても宝物でしょう。
時間や健康などお金では買えないものは、もちろん私にとっても宝物ですが、これらと同じくらいの宝物があります。
それは「ギターが弾けること」です。
私は幼い頃から何事もすぐに投げ出しがちでした。
習い事とかスポーツとかも、いつも何をやっても中途半端で長続きしませんでした。
飽きっぽいというか根気がないというか、1・2年やれば何となく納得してそれで終わり。そんな子供でした。
音楽に興味を持ち始めたのは中学生くらいの頃。
高校生になって、ギターを始めてみるとこれが何故かピッタリとはまってしまったのです。
練習すればどんどん上手くなるし、音楽への興味はどんどん増していき、日々頭の中ではギターや音楽のことばかり考えるようになっていきました。
「ギターの上手い人は頭の中で何を考えながら弾いているのか」「演奏が上手く聴こえるのには何かカラクリがあるのか」「バンドの中でのギターの役割とはどういうものなのか」。
ギターの技術、メロディやハーモニー(和音)の仕組みなど、音楽のことを深く知れば知るほど、もっと勉強したい気持ちが強くなって夢中になっていきました。
何をやっても中途半端だった自分が、どうしてギターだけは今まで続けて来れたのか分かりませんが、辞めずに続けて来てほんとに良かったと思ってます。
私が今までギターを続けて来て思うことは、人はどんな事でも、本気でやる気になれば出来るんだなということです。
そういえば、私が通っていた音楽学校の先生もよく「人間その気になれば、大抵のことはできると思う」と言っていました。
芸術やスポーツや物創りの世界などで、人並み外れた技術を持った人達がメディアで取り上げられることが多々ありますが、私たちは彼らの姿を見ると、「彼らは自分とは違う、どこか別世界の人たちだ」と、思いがちなのではないでしょうか。
でも、どれだけ凄い技術を持った人でも、当然自分たちと同じ人間ですよね。
同じ人間なのに、彼らに出来て自分に出来ないということはないはずです。
彼らと同じように本気で取り組み、努力しだいでは、彼らと同じにはなれないにしても、ある程度の近いところまでにはなれるんじゃないかと思うようになりました。
ギターを続けてきたことで、何事にも挑戦する気持ちが持てるようになったり、いろんなことが前向きに考えられるようになりました。
そして、多くの人と出会って、友達になることが出来ました。
ギターを初めて20年近く経ちますが、今思えば、親しい友人は皆音楽を通じて知り合った人達ばかりです。
以前に観たあるテレビドラマの台詞に「手に職を持っていることは、宝物を持っているのと同じ」という言葉がありました。
楽器が弾けるということも、それと同じくらいの宝物だと思います。
大きな家に住んでいようと、高価な自動車を所有していようと、形のある物はいつか無くなりますが、楽器の演奏力というのは続けている限り失うことはありませんからね。
人が努力して得た技術は失わないのです。
もしあなたも楽器を弾く人なら、今まで取り組んできた時間は、きっとあなたにとって宝物だと思います。
宝物の価値に気づかずに簡単に手放してしまう人も大勢いますが、その価値は続ければ続けた分だけ、まるで雪だるまのように大きくなっていきますよ。
楽器を長年続けていると、目標を見失ったり、練習意欲が湧かなくなったり、モチベーションが下がってしまうこともありますが、それを乗り越えるのもまた努力ということなのでしょう。
『継続は力なり』という言葉がありますが、その言葉の本当の意味を理解できるのは、生涯にわたって何かを続けた人だけなのかもしれません。
『今自分にできること。頑張ればできそうなこと。そういうことを積み重ねていかないと、遠くの大きな目標は近づいてこない。』イチロー(プロ野球選手)
『長い階段は、一気に上がろうとすると、途中でへばってしまう。でも一段ずつ確実に上がっていけば、時間はかかっても、やがてはちゃんと頂上まで上がることができる。』高橋尚子(陸上選手)
『「そのうちやる」という名の通りを歩いて行くと、行き着くところは「なにもしない」という名札のかかった家である。』セルバンテス(作家)
『自分との約束事を作って、必ず実行しろ。ここぞって時に力が出る。』桜井章一(雀士)
西沢恭輔