ギター・ウクレレ教室 Talking

奈良県桜井市のギター教室

 

コラム

現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。


理想的なレッスン時間と回数

これから楽器を習いに行こうかと考えている人には、レッスン時間と回数で迷う人も多いのではないでしょうか。

1回のレッスン時間が長く、回数が多くなれば受講料は高くなり、反対に1回のレッスン時間が短くて、回数が少なくなれば受講料は当然安くなりますよね。

大抵の人は1ヶ月のレッスンのトータル時間から受講料の単価を計算し、どのスクールが割安かと見ていることでしょう。

例えば、1ヶ月に『60分レッスンが2回』のスクールと『30分レッスンが4回』のスクールでは、トータルのレッスン時間はどちらも120分で同じです。

この場合、受講料が同じなら『60分レッスン2回』のスクールを選んでおけば、通う回数が少ない分、交通費や移動時間が節約できて好都合だと考える人が多いかもしれません。

例え1ヶ月のレッスンのトータル時間が同じでも、レッスン時間の長さと受講する回数しだいで生徒さんの上達ペースは大きく変わってしまいます。

お金も時間も沢山投資する余裕があるなら、レッスン時間を長く、回数も多くするに越したことはないですが、レッスン時間を長くするか、あるいは回数を多くするか、このどちらかを選ぶとしたらどっちを優先すべきでしょうか。

今回は、1回のレッスン時間とその回数についてどう考えればいいのかを解説します。

結論を先に言うと、こうなります。

まだ応用力のない初級者は、1回のレッスン時間は短くてもいいが、回数を多くするべき。
反対に、そこそこ応用力のある上級者は、回数は少なくてもいいので、1回のレッスン時間は長くするべきです。

ここで言う上級者や初級者というのは、演奏レベルや経験値のことです。

何をもって上級者とか初級者とか、はっきり定義付けることはできませんが、ざっくりと演奏力や知識、経験値の高い人が上級者で、その逆が初級者ということにしておきましょう。

どんな分野にも言えることだと思うのですが、初級者に適した学び方と上級者に適した学び方って違いますよね。

初級者と上級者の学び方の違いを理解するには、小学生と大学生の勉強に置き換えて考えると理解しやすいのではないでしょうか。

例えば小学校の国語や算数の授業は、1科目の授業時間は短く、そして授業の間隔が接近しています。
1コマ45分の授業を週に何度も受講する、というカリキュラムになっています。

小学生は基礎学力を身につける時期なので、一つ一つの学習の内容は単純で理解しやすいものばかりですが、何もない所から基礎を習得するわけですから、時間をあまり空けずに授業を受けさせる必要があります。

与えられる課題のハードルは低く、似た内容のことを短いスパンで繰り返す。
ひとことで言うと、「単純なことを反復する」という学び方です。

実際に、小学校では国語と算数は月曜から金曜まで週5回あって、土日祝は必ず宿題が出ますよね。これは「読み、書き、計算」に毎日触れさせる必要があるからです。

対して大学はどうでしょうか。1回の授業時間が長く、1科目の授業の間隔がそこそこ離れています。
1コマ90分の授業を1〜2週間おきに受講するシステムになっていることが多いようです。

大学は初等教育を修了した学生たちが集まっていて、すでに基礎は身に付けているものとして、より高いレベルの知識や学力を習得する目的で授業は進みます。

与えられる課題のハードルは高く、時間をかけて自分の力で課題の答えを導き出すという学び方をします。
ひとことで言うと、「問題の解決法を考える」という学び方です。

というか、高等教育では「自分が何を学ぶべきか」ということも自身で考えるものですよね。

これはギターやウクレレの学び方においても同じです。

初級者(初心者)のような基礎を身に付ける段階にある生徒さんは、取り組む内容はシンプルで、説明を受けるのも理解するのもそれほど時間は要しません。

なので1回のレッスン時間はあまり長く取らなくてもいいでしょう。

自分は理解が遅く、ゆっくりと時間をかけて教えてもらいたいという人や、質問したいことが沢山あって、一度に多くのことを教わりたいという人は長めのレッスン時間を選ぶのもいいと思います。

但し、受講する回数は上級者に比べて多くなくてはなりません。

前述したように、初級者(初心者)の学び方は初等教育に似ています。

初級者に与えられる課題のハードルは低く、1週間ちゃんと毎日続ければおおかたは習得できる内容に設定されています。

1週間あれば習得できるであろう課題をもらい、1週間でそれをクリアし、1週間後に次の課題をもらうためにレッスンを受講します。(ここが重要)

先生から習った練習法を応用させて一人で練習を先へ進めて行くなんて、まだ応用力のない初級者には容易でありません。

もし自分の解釈が間違っていて、自宅で誤った練習をしてしまっていたとしても、短いスパンで受講していれば変な癖がつく前に間違いを正してもらえます。

だから初級者ほど、レッスン時間は短くてもいいので、間隔を空け過ぎず短いスパンで受講するべきなんです。

理想は週に1回のペース、最低でも月に3回は受講しましょう。
空き過ぎず近過ぎず、等間隔で受講するのがベストです。

「3日連続で受講して、次の受講は1ヶ月後」みたいなことをしても無意味であることは理解できますよね。

次に上級者のケース。

上級者は取り組む内容が難解になるので、解説を受けるのも理解するのも少々時間がかかります。

必要なことをちゃんと理解して、必要な課題をもらうには、1回のレッスン時間は長めに取っておいた方がいいです。
複雑でややこしい解説を受けている途中で時間切れになっては悔いが残りますからね。

上級者ともなればレッスンの間隔が少し空いても、初級者ほど問題ではありません。

短いスパンで小刻みに指導を受けなくても、自身の課題にじっくりと一人で取り組めるはずだし、一つの練習法を応用させて他の技術を自力で習得することもできるようになります。

定期的に先生から指導を受けて、練習の進捗状況を確認してもらった方が安心だし、モチベーションが維持できるという人は、回数を多く受講するのもいいと思います。

応用力のある上級者ほど、回数は少なくてもいいので、レッスン時間は長めであるべきです。

理想は1レッスン60分くらいでしょうか。

「45分や60分レッスンが月2回」となっているようなスクールは、初級者には適さないスクールと思ってまず間違いないでしょう。どちかと言えば中級者以上向けのスクールだと思います。

最後に、初級者(初心者)でも1回のレッスン時間を長く設定することで、高い効果が得られる2種類のタイプの生徒さんについて解説しておきます。

一つ目は、平均的な人よりも理解するのに時間のかかるタイプの人です。

楽器のレッスンというのは、“正しい練習のやり方”を教わる時間です。
「何を、どうやって、何を意識して練習すべきか」を理解しなければなりません。

この“正しい練習のやり方”が理解できないまま帰ってしまうとどうなるでしょうか。

当然、自宅で正しい練習を継続することが出来なくなりますね。

なので、他人より飲み込みの遅いタイプの人は、少し時間をかけてゆっくりと解説してもらうしかありません。

平均的な人が30分間で習う内容を、45分や60分をかけて習うような感じです。
これで理解に時間がかかるというハンデを補えます。

二つ目は、平均的な人よりも日々の練習量が多いタイプの人です。

繰り返しになりますが、楽器のレッスンは“今から取り組むべき課題をもらう”ために受講するものです。

例えば、平均的な生徒さんが1回30分のレッスンで課題Aをもらうとします。
その課題Aは、1日30分の練習を1週間続ければ充分習得できる難易度に設定されているものと仮定します。

すると生徒さんは、次回のレッスンまでに毎日30分の練習をこなし、課題Aの習得を目指すわけですが、もし毎日60分練習する習慣のある生徒さんの場合はどうなるでしょうか。

おそらく課題Aは容易に習得できるはずです。
課題Aの練習にみっちり取り組んでも、まだ余裕のある状態ですよね。

そこでレッスン時間を45分や60分にすることで、課題Aだけでなく、課題Bも貰うことができるわけです。

指導者というのは、こういう日々の練習量が多い生徒さんはプレイを見ていれば解るもので、「この生徒さんはよく練習しているようなので、多めに課題を与えてもいいだろう」、となるわけです。

他人より多めの課題をこなすことができれば、もちろん上達は早くなりますね。

なので、日々の練習量の多い人はレッスン時間を長めに設定しておくことで、平均的な人より早くレッスンが進んで行き、早く上達できるということです。

今回のまとめ

  1. 応用力のない初級者ほど、レッスン時間は短くてもいいので、間隔をあまり空けずに受講するべきである。
  2. 応用力のある上級者ほど、受講する回数は少なめでもいいので、レッスン時間は長めに設定するべきである。
  3. 理解力に自信のない人は、もしお金に余裕があるならレッスン時間を長くすることで、上達の遅さを補うことができる。
  4. 初級者でも日々の練習量が多めの人は、もしお金に余裕があるならレッスン時間を長くすることで、更に上達を早めることができる。
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西沢恭輔