現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。
音楽教室には、何処の教室にも “発表会” というのがありますね。
年に一度の生徒さんたちの発表の場です。
ギターやウクレレを習っている人の中には、「発表会には参加するべきか?」「参加するメリットが何か解らない」という悩みや疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。
そもそも発表会って、何のためにあるのか知っていますか?
今回は発表会の目的と、参加することで得られるメリットについてお話します。
発表会への参加を迷っている人は参考にしてみて下さい。
私が思う、発表会に参加することで生徒さんが得られるメリットは、大きなもので3つあります。
「発表会でこの曲を弾く」という具体的な目標があるのとないのとでは、練習への気持ちの入り方が変わってくるのではないでしょうか。
楽器を上達するには、ただ漠然と「いつか、あの人みたいに上手くなりたい」というイメージだけでなく、「いつまでに、これだけのことを身につける」という具体的な目標を設定し、それを実行したという成功体験を重ねることがとても大切なのです。
一人で練習していても、いまひとつモチベーションが上がらないという人や、何を目標に練習したらいいか分からないという人は、発表会をひとつの目標にするといいと思います。
それがギターやウクレレを続けて行くモチベーションになるのであれば、大きなメリットだと言えます。
「絶対に練習しなければならない」という環境に身を置くことで、そうでない人と比べて、上達の早さは全然違ってくるものだと思います。
練習しなければならない明確な理由がないと、ついつい怠けてしまうという人は、発表会は必要な機会だと考えましょう。
社会に出ると、職場の同僚や学生時代からの友人との付き合いばかりで、新たに友達が増える機会が少なくなると感じることはありませんか?
発表会は、同じ趣味を持つ人との出会いの場でもあるのです。
音楽の世界では、“縦の繋がり” と“横の繋がり” が大切だと言われています。
縦の繋がりというのは先生と生徒や、師匠と弟子という関係です。
横の繋がりは、一緒に演奏したり、一緒に学ぶ仲間です。
いい指導者に出会えることはとても大切です。
しかし、それと同時に一緒に演奏する仲間に出会えることも、楽器を学ぶうえではとても大切なことなのです。
私の実体験から言って、いつもひとりで練習しているだけの人と、一緒に演奏する仲間がいる人とでは、上達の早さが全然違う気がします。
一緒に演奏する仲間がいる人は、学んだことを活用させる機会があるうえに、自分に足りないものがよく理解できるようになるのです。
一緒に演奏するとまでは行かなくても、情報交換したり、レッスンの進捗状況を話し合ったり、ただ音楽の話しが出来る友達がいるだけでも結構楽しいものですよ。
発表会は横の繋がりを増やす絶好の機会でもあるわけです。
人前で弾くのって緊張しますよね。
私もいまだに緊張します。
どんなに楽器が上手い人でも、人前で弾く時は緊張するそうです。
人前でも緊張しないで普段通りの演奏ができるようになるには、どうしたらいいか。
これはもう、人前で弾く経験を沢山積むしかありません。
1回でも多く経験することです。
回数をこなすことで、免疫ができ、次第に緊張しないで人前でも本来の実力が出せるようになって行くのです。
いや、「緊張していても実力が出せる」と言うべきかもしれません。
発表会は、このメンタリティーを鍛えるためのトレーニングができる貴重な機会なんです。
このことを認識することはとても大切なことです。
私はこの3番が、発表会で得られる一番大きなメリットだと思っています。
1番と2番は、発表会でなくても個人的に成し得ることはできますが、人前でも緊張しないメンタリティーを身につけるトレーニングを個人的に実行するのはとても大変です。
人前で弾く機会を自分で作るには、個人でライブを行うしかありません。
どんなのがあるかというと、例えばライブハウスに出演したり、ストリートライブをしたりです。
べつにライブハウスでなくてもいいですよ。
公民館のような公共施設を自分で借りて、聴いてくれる人を集めてももちろんいいわけですが、とてもお金や手間がかかってしまいます。
会場を借りて、機材を用意して、伴奏してくれる人を自力で見つけて、集客のためのチラシ作りも全て自分でやる。
これは人前で弾く経験を積みたいだけの人にとっては、あまり現実的ではないですよね。
それが音楽教室の発表会なら、それらの面倒な作業は全て運営側がやってくれます。
自分は参加費を払って、当日会場に行って演奏するだけです。
参加費は、“人前で弾く経験を積む” ための授業料だと考えましょう。
人前でも緊張しないメンタリティーを身に着けたい人にとって、発表会に参加するメリットはとても大きいはずです。
その他のメリットもいくつか紹介しておきましょう。
自分と違う楽器(パート)の人と合奏したり、先生以外の人と合奏する機会が得られるのも発表会ならではのものです。
アコースティックギターやウクレレの生徒さんにとって、普段使う機会の少ない機材の扱い方を学ぶことができたり、発表会用の大型アンプやマイクの扱い方を学ぶこともできます。
会場の広さや環境によって音の響き方(聴こえ方)が違うことも、実際にステージに立つことで体感して知ることができるのです。
ステージの上に設置された照明の熱が、どれくらいの暑さになるか知っていますか?
あまりの暑さに、手が汗でびちょびちょになった状態でも練習通りに演奏できるでしょうか。
ステージが暗すぎて、あるいは照明が眩しすぎて楽譜がまともに見れないという状況で演奏した経験はありますか?
実際にステージに立って演奏してみないと解らないことは、まだまだ沢山あります。
私の教室には、「人前で弾いても恥ずかしくないくらいの実力にはなりたいです」「上手くなって、人から拍手がもらえるくらいの腕前になりたいです」と意気込んで入会してきたのに、発表会には一度も参加しない生徒さんが大勢います。
いつ誰に聴かせるつもりでいるのか、その実力をどうやってつけるつもりなのか、いつも不思議に思います。
発表会は必要ないという人も確かにいるとは思います。
例えば、具体的な目標と期限を自分で決めて、それを確実に実行できる人。
すでに演奏仲間がいて、個人的にライブ活動を行なっている人とかでしょうか。
もしくは「演奏仲間なんて求めていないし、一生人前で弾くつもりがない(人前で弾けない自分のままでいい)」という人ですよね。
おそらく、多くの生徒さんにとって発表会は必要なのではないでしょうか。
自分が成長できる機会を棒に振ってしまわないよう、発表会にどんなメリットがあって、何を学ぶ場なのかをしっかり理解して、自分の行動を決めるようにしましょう。
西沢恭輔