ギター・ウクレレ教室 Talking

奈良県桜井市のギター教室

 

コラム

現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。


アルバムを聴こう

“音楽鑑賞”が好きだという人、世の中にどれくらいいるのでしょう。

今回は自宅での音楽の聴き方についてのお話です。
音楽の聴き方といっても、メディアの違いについての話ではありません。
作品として、鑑賞の仕方の話です。

メディアの意味が分からない人のために、簡単に解説しておきます。
メディアというのは、音楽を聴くための媒体です。
つまりレコードや、CD、カセットテープ、MP3などの記録媒体のことです。

今ではストリーミングで聴くのが主流のようですが、私は好みの音楽はCDで聴くのが好きです。
便利なのでストリーミングで聴くこともあります。

今回は「音楽を作品としてどう鑑賞するか」の話なので、メディアは何でもいいです。

あなたは音楽を聴く時、いつもどういう聴き方をしていますか?

他にもいろんな聴き方があると思いますが、私は大体この3種類の聴き方をしています。
前述したように、私は好きなアーティストの音楽はCDで聴くようにしているのですが、なるべくアルバムを曲順通りに再生して聴くようにしています。

日本ではアーティストが発表する作品には、シングルとアルバムがありますね。

シングルで数曲発売した後に、それらの曲が含まれたアルバムを発売することがほとんですが、欧米では楽曲を単体で発売するのではなく、最初からアルバムを制作してリリースするというのが一般的だったようです。(今はシングルでリリースすることも普通になってきているようですが)

つまり、欧米ではアルバムでひとつの作品だと考えられているということです。

アルバムというと、だいたい10〜15曲くらい収録されているものが多いですね。
6曲くらい収録されたミニアルバムと呼ばれるものもありますが、あまり決まりがあるわけではないようです。

アーティストはアルバムを制作するために、収録曲を作曲して録音するだけでなく、曲順を決めたり、アルバムのタイトルを考えたりします。

時にはジャケットのデザインを考えたりすることもあるのではないでしょうか。

アーティストにとってアルバム制作は、子どもを産み落とすような感覚だと言われているそうです。

シンガーソングライターの椎名林檎さんはアルバムを制作する時、曲と曲の “繋ぎ目” を特に意識して制作しているそうです。

例えば、曲と曲の間の時間を極端に短くしたり、少し長くしたり、曲調に応じて曲間の時間を調整しているのだそうです。
そうすることで、前の曲から次の曲へ自然な流れで聴けるようになっていたり、曲の冒頭部分を強く印象づけることが出来るそうです。

そんなことまで気を使っているなんて驚きです。

個人的にもっと驚いたのは、曲間の長さだけでなく、曲の最後の音と次の曲の冒頭部分の音との繋がり方も考えて作曲しているということです。

なんと彼女は曲のkey(調)や最後のコードの響きを考慮して、次の曲のイントロを作っているのだとか。

曲から次の曲へ移る時に世界観を崩さないようなコードの流れにしていたり、あえて空気感を一転させたい場面ではそれも考えてイントロを作っているそうです。

アーティストはみんなそんなことまで考えてアルバムを作っているんですかね?

1曲を完成させるだけでも凄いことなのに、曲と曲の繋がりまで考えて10曲以上入ったアルバムを完成させているなんて、本当に驚きです。

リスナーの立場に立って、どうすれば自分が表現したい音楽をリスナーに伝えることが出来るか、細かなことまで考え抜いて作られているわけですから、本当に壮大な創作物と言えますね。

「子どもを産み落とす」と表現されるのも解る気がします。

ギターやウクレレを弾く人なら、誰でも好きなアーティストの一人くらいはいますよね。

私の生徒さんにもご自分の好きなアーティストのことを話してくれる人がいますが、大抵は好きな曲だけを単体で聴くことが多いそうです。

ストリーミングが主流となった今では、若い世代の人たちの中にはアルバムの存在すら知らないという人もいます。

私たちリスナーはアルバムの曲順を無視して聴いたり、聴きたい曲だけを単体で聴くのでは、アーティストが表現している音楽をちゃんと味わい鑑賞することは出来ないのではないでしょうか。

1曲を聴いただけでは、作品の断片を聴いたに過ぎないのですから。

いろんな聴き方があっていいとは思いますが、せめて自分の好きなアーティストの作品くらいはしっかり聴いて味わってみましょう。

アルバムを曲順通りにフルで聴くと、長いものだと60分以上ある版もありますが、全体を通して聴くことで今までに気づかなかったアーティストの魅力に気づくことがあるかもしれませんよ。

西沢恭輔の写真

西沢恭輔