現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。
エレキギターやアコースティックギター科の生徒さんから、弦の張替えについての質問をよく頂くので、今回はギターの弦交換についてのお話です。
一番多い質問は、「弦はいつ交換したらいいの?」というもの。
もうひとつは、「どの弦を選べばいいの?」です。
どちらも深掘りすると長くなりそうなので、今回は「交換の時期とその見分け方」について書いてみようと思います。(「弦の選び方」については次回の予定です)
エレキやアコギで使う金属製の弦って、ウクレレのようなナイロン製の弦に比べて、交換の時期が早いのが特徴です。
金属は錆びますからね。弾けば弾くほど劣化するのが早いわけですが、全く弾いていないギターでも時間の経過と共に錆びて来てしまうので注意が必要です。
どのくらい劣化したら交換すべきか、タイミングが解らない。
「よし、今から交換するぞ」と、決心するのにいつも時間がかかるという人は、よければ参考にしてみて下さい。
弦交換のタイミングを知る前に、まずは錆びた弦、劣化した弦でギターを弾くことで起こるリスクを知っておきましょう。これはとても大事なことです。
錆びた弦でギターを弾くリスクは大きなもので3つあります。
まず当然ですが、音が悪くなります。
音色や、音の伸び、ピッチ、チューニングの精度、いい演奏をするための全ての要素が悪くなります。
音が悪いということは、そのギター本来の音色の美しさが無くなっているということなので、弾いていても全然楽しくないというのが個人的な感想です。
音の悪いギターって、弾いていてテンション上がりませんよね。
錆びた弦が張られているギターも同じで、全然楽しくないんですよ。
弾く気が失せる、という感じです。
いくら高価なギターでも、錆びた弦を張っていては良い音なんて出ないですから、極上のギターの極上のサウンドを堪能することは出来なくなってしまいます。
実は、錆びた弦を張ったままにしていると、大切なギターはたちまち痛んで行きます。
ギターのフレットって、弾けば弾くほど摩耗して行くことはご存知ですよね。
新品の弦でも弾けば必ず摩耗して行きます。これは防ぎようがありません。
では錆びた弦ではどうでしょうか。
錆びた弦のままで弾くと、錆びた弦がフレットに当たるわけですから、新品の弦に比べてさらにフレットは削れやすくなりますね。
それから、ネックにも悪影響があるようです。
金属製の弦は錆びると硬くなるせいか、ネックが反りやすくなるそうです。
全く弾かなくても、錆びた弦を張ったまま放置しているだけでも、ネックが反りやすくなるので、ここは注意が必要ですね。
考え方によっては、これが最も大きなリスクではないでしょうか。
劣化した弦というのは、ギターを演奏するうえで必要な全ての要素に悪い影響を与えるわけですから、ピッキングの正確さや、音の伸び、コードの響き、ビブラートやベンドによる表現など、言い出したらきりがないですが、あらゆる面において自分のイメージを正確に表現することが出来なくなります。
この状態で練習しても、技術がちゃんと身に付かないことは解りますよね。
なので上手いギタリストほど、常に新品の弦を張って弾いています。
本番でも、練習でもです。
弦が錆びたままでギターを弾くことにどんなリスクがあるかはご理解頂けたでしょうか。
要するに、いいこと何もないんですよ。
損することばかりです。
もしあなたがギターが好きで、上手くなりたくて、ギターを弾くことで幸福感を得たいなら、常にいい状態の弦で弾くようにしましょう。新品か新品に近い状態の弦です。
次に弦交換のタイミングと、その見極め方について解説します。
そのために、先に弦の構造の違いについて触れておきましょう。
金属製の弦には2種類の構造があります。
それは「巻き弦」と「プレーン弦」です。
巻き弦は、表面がザラザラした質感になっていて、太い弦に用いられています。
アコギ弦では6弦〜3弦に使われていて、5円玉、または10円玉に近い色をしています。
エレキ弦では大抵6弦〜4弦だけが巻き弦になっています。
(一部エレキ弦でも3弦が巻き弦になっている商品もあります)
対してプレーン弦は、ツルツルした質感でピカピカの銀色をしています。
アコギ弦の2弦と1弦、エレキ弦の3弦〜1弦のように細い弦に用いられます。
新品の5円玉や10円玉のような色をした巻き弦が、錆びた5円玉や10円玉のようなくすんだ色になって来た。
プレーン弦のピカピカの銀色が、黒ずんでザラザラとして感触になって来た。
という辺りが弦交換のタイミングです。
特にプレーン弦には注意が必要です。
上から見て一見きれいに見えても、弦の裏側(フレットに当たる部分)を指で触ると、ザラザラになって劣化しているのが感じられることがあります。
見るだけではなく、直接指で触って感触を確かめるようにしてください。
実は弦の交換時期というのは、人によってかなり差があるのです。
何故かというと、弦の劣化は弾いている時間と弾き手の体質に関係しているからです。
毎日長時間弾く人、短時間の人、週に1〜2回しか弾かない人、弾いている時間は人によって違います。
毎日同じギターばかり弾く人もいれば、何本ものギターを所有していて使い分ける人もいるので、弦が劣化するペースは人によって違ってきます。
使っている弦によってもかなり異なります。
各メーカーの商品によって寿命が違うからです。
それから、あまり知られていないかもしれませんが、人の体質による違いもあるようです。
かく汗の量や体質によって、弦が錆びやすい人とそうでない人がいるのです。
人間の身体の表面は弱酸性と言われていますが、やや酸性が強い体質の人がいるようです。
この体質の人は、他の人と比べて異常に弦が錆びるのが早いのです。
私も20代の頃は、弦が錆びるのがとても早いのが悩みだったのですが、歳を重ねるにつれてその傾向が治って来ているような気がします。
体質が変わって来ているのかもしれませんね。
このように弦の交換時期というのは個人差があるので、「どのくらいの周期で交換すればいい」というマニュアルがあるわけではありません。
なので、「どういう状態になったら交換すべきか」を知ることが大切なのです。
自分のギターの状態をよく見て、常に劣化の進み具合に意識を向けておきます。
必ずいいコンディションを保ちましょう。
私は少しでも弦の寿命を延ばすために、弾いた後は必ずクロスで汗を拭き取るようにしています。
これをやるのとやらないのでは、かなり寿命が変わってくる印象です。
ギターを弾く前に石鹸で手を洗ったり、ウェットティッシュで手の汗や汚れを拭き取っておくのも、弦の寿命を延ばすためには効果的だと思います。
西沢恭輔