ギター・ウクレレ教室 Talking

奈良県桜井市のギター教室

 

コラム

現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。


練習が退屈に感じる人

ギターやウクレレを練習していて、「退屈で面白くない」と感じたことはありませんか?

楽器を習っていると、いわゆる “退屈で面白味のない練習” をやらされることになります。
特に上達することを目指して本格的な指導を受けようとすると、必ずこの “退屈で面白味のない練習” が付いて回ります。

私の生徒さんの中にも、練習が「退屈で面白くない」とネガティブな感想を口にする生徒さんは結構います。

感じたことを素直に言っているだけなので、べつにそれが悪いことだとは思いません。

ただ知っておいて頂きたいのは、ネガティブな感想を全く言わない人もいることです。

このネガティブな感想を口にする人は、度々口にします。
一方で、ネガティブなことを口にしない人は、全くしません。

不思議ですよね。

同じ先生から同じことを習って、同じ課題をもらっていても感じ方が大きく違う。
同じことを練習しているのに、退屈だと感じる人とそうでない人がいるのは何故でしょう。

思っているけど、口にしないだけなのでしょうか。

いえいえ、そんなことはありません。
生徒さんの中には練習が退屈だと感じたりしないで、興味深く捉えて、熱心に課題に取り組む人も確かにいます。

今回は、練習が “退屈で面白くないと感じる人” と “そうでない人” の違いや、
“退屈で面白味のない練習” にどう向き合って行けばいいかについて、私の見解をお話します。

多くの人が退屈だと感じる練習には、基礎トレーニングや、あまり好きじゃない課題曲やエチュードの練習などがあるのではないでしょうか。

特にギターやウクレレの学習初期の段階では、基礎的な練習の占める割合が大きくなりますが、基礎練習が退屈だからといって、自分の好きな曲の練習に取り掛かれば楽しくなるのかというと、そうではありません。

基礎練習が退屈で楽しくないと感じる人は、曲の練習をしても楽しくはなりません。

実際に「基礎練習は嫌だ」という生徒さんに、本人の好きな曲を指導しても「楽しい」とは言いません。
口に出して言わなくても、「楽しくない」という顔をします。(検証済みです)

曲の練習に入った直後は新鮮で一瞬わくわくする感覚はあるかもしれませんが、次第にわくわく感は薄れて行き、基礎練習と同様にまた退屈で楽しくなくなってしまいます。

「自分は飽きっぽい性格だから」と言う人もいますが、果たしてそうでしょうか。

私は性格によるものではないと思います。
練習が退屈に感じるか否かは、その人の性格ではなく “頭の中の思考” によるものだと思います。

つまり、興味を持ってその練習に取り組めるかどうかということだと思います。
「その練習から何が学べるか」「自分の目標にどう繋げていけるか」という具合です。

そもそも練習とは、今自分が出来ないことを出来るようにするためのものですよね?
上手く弾けないところを、どうすれば上手く弾けるかを考えて、自分の理想に近づけて行くものです。

その昔エジソンも、電気を発明するまでには何度も失敗を繰り返し、こんな言葉を残したそうです。

「私は100回失敗したのではない、上手く行かない100通りの方法を見つけることができた」
試行錯誤を繰り返したことで、正解にたどり着けたという意味です。

ギターやウクレレの練習も同じようなものではないでしょうか。

上手く弾けないところは、どうすれば上手く弾けるか。
苦手なことは、どうすれば克服できるか。

自分の中での答えが見つかるまで試行錯誤を重ねます。

この「答え探し」が楽器の面白さなんですよ。

自分が立てた仮説から答えが見つかった時に、大きな嬉しさがあるんです。
何か凄い大発明でもしたような気分です。

そしてその答えから理想の演奏に近づけた時に、さらにモチベーションが上がります。
もっといっぱい練習して、もっと上手くなりたい気持ちが込み上げてきます。

こうして益々ギター(ウクレレ)を弾くのが好きになるってわけです。

これが、練習を退屈だと感じない人の思考です。

では、練習が「退屈で面白くない」と感じる人の思考はどうなっているでしょうか。

おそらく、頭の中に何もないのではないでしょうか。
答えを探すわけでもなく、試行錯誤もない。

これを弾けと言われたから、ただ弾いただけ。

それでは練習とは言えないし、ただ作業をしているだけのようなものですよ。
その時間からは何も生まれません。

頭を使わずただ作業をしているだけの時間なら、退屈で楽しくないのも当然ですよね。

そもそも何を身につける為の練習なのか、そこを考えたりはしないのでしょうか。

(少し厳しい指摘になってしまいましたね)

「楽しくないけど必要なことなら仕方ない」と、嫌々でも練習に取り組める人ならまだいいのです。
ゆっくりでも上達はして行くでしょう。

問題なのは「楽しくないことはやらない」というスタンスの人です。

練習することを “リスク” だと捉えているんですね。

このタイプの人は、上手く弾けないところが出てくると練習の内容を変えたがる傾向があります。
何か違うことをやれば楽しくなるかもしれないと期待しているのでしょう。

ところが、練習の内容を変えても結局同じなんですよ。
基礎練習や課題曲から何も学ぼうとしない人は、好きな曲に取りかかっても、やはりそこから何も学ぼうとはしないのです。

曲がころころと変わっているだけで、何も身に付かないまま時間だけが過ぎて行きます。

好きな曲を練習していて、スイスイと調子よく弾ける時は機嫌がいいのですが、上手く弾けないところが出てくると途端に弾くのが楽しくなくなってしまうんですね。それは表情を見ていれば解ります。

出来ないことを出来るようにするのが練習ですから、上手く弾けないところが出てきた時が本当の練習の始まりなのです。

練習が退屈だと口にする生徒さんによくあるのは、「ギターやウクレレを習えば、先生が楽しい時間を提供してくれる」と思ってしまっていることです。(私の主観ですが)

先生が楽しい世界へ導いてくれるものと期待していたけど、そうじゃなかったから不満を口にしてしまうのだと思います。

私たちのようなギター(ウクレレ)講師って、楽しい時間を与えてくれるわけではないんですよ。
ただ “学び方” を教えてくれるだけなんです。

“楽しい時間” は自分で作り出すものなんです。

練習の内容を変えたからといって、何かが劇的に変わるわけではありませんよ。
思うように進まなくなると、取り組む内容を変えたくなる気持ちは解りますが、理想の自分になるには地道に努力を続けて行くしかありません。

練習の内容を変えるより、自分自身を変えるべきなのです。

憧れのあの曲が弾けるようになれると期待して、ギター(ウクレレ)を買って習いに行ってみたけど、練習は退屈で面白くない。充実感を感じることもなく、まともに一曲も弾けないまま「こんなはずじゃなかったのに」と思いながら止めてしまったという人、世の中には大勢いるはずです。

私の教室に来て下さった生徒さんにも、こんな人は何人もいます。

でもね、その逆の人も大勢いるんですよ。

世の中にはギターやウクレレの上手い人なんていくらでもいますよね。
その人たちは、生まれた時から上手かったと思いますか?

現在プロの演奏家として活躍している人も、ギターやウクレレの先生をしている人も、かつては先生から習っていたという人が殆どです。

どんな上級者でも、皆んな最初は同じところからスタートしているんです。

私が一番伝えたいのは、「全て自分しだい」だということなんです。

ギター(ウクレレ)が上手くなれるかどうかも、充実感を得られるかどうかも、人生が輝いたものになるかどうかも、全部自分しだいでしょ。

練習が退屈かどうか、それも自分しだいなんですよ。

今自分が何を選択して、どう行動するかで未来の自分がどうなるか決まって行きますよね。

「練習が退屈で継続できない」という人にひとつアドバイスしておきましょう。

まず、楽器の練習は「今の自分へのご褒美」ではなく、「将来への投資」であることを理解しておきましょう。

自分へのご褒美として、楽しい(楽しそう)と思うことをするのは悪いことではないですが、それは練習とは違うのでそこは切り離して考えましょう。

自分が将来“ どうなりたいか” を想像して、その将来のために “今何をやるべきか” を考えます。
感情で行動するのではなく、論理的に考えて行動する習慣をつけます。

これから自分が取り掛かろうとしている練習が、「何のための練習なのか」を言語化するようにしてみて下さい。

例えば、「コードチェンジをスムーズに出来るようにするための練習」とか「ドレミファソラシドを正確なリズムで均等な強さで弾けるようにするための練習」とか、「同じことを集中力を切らさず長く繰り返して弾けるようにするための練習」という感じです。

全然難しいことではないですよね。(もし、与えられた課題が何のための練習か解らないという人は、ちゃんと先生に聞くようにしましょう。)

こうやって自分が取り組んでいる練習に対して、その目的を言語化するだけで、その練習が今の自分に必要なことかどうかが理解できて、頭の中が整理できるようになります。

そうすると、“ただ楽しいことを弾いているだけ” の時間から、“今の自分に必要な練習” に取り組む時間へと変わっていくはずです。

「弾いていて楽しいこと」と「上達するための練習」は必ず分けて考えること。

例えば、1日に1時間ギター(ウクレレ)を弾くとした場合、15分は楽しいと思うことを弾いて、残りの45分は上達するために必要な練習をするという感じです。

小学生の頃、国語や算数を勉強する日と遠足に行く日とではどっちが楽しかったですか?

私は遠足の方が断然楽しかったです。

でも遠足が楽しいからといって、毎日遠足ばかりしていては国語や算数は身に付かないですよね。
逆に国語や算数ばかりの毎日では学校生活は楽しくないし、目標を見失ってしまう可能性も出てきます。

何事もバランスが大事なんだと思います。

自分の頭の中のスイッチを切り替えてバランスよく練習することが、挫折しないで継続していくコツでもあるのです。

上達の早い人たちは、この頭の中のスイッチの切り替えがとても上手なのです。

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西沢恭輔