コラム

現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもよい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を綴っていきます。

楽譜の必要性

ギター(ウクレレ)を弾くには楽譜は必要か?

楽譜を読むことを「読譜」といいます。読譜力を身につけることがギター(ウクレレ)の上達に役立つことは間違いありません。

私の教室に来られる生徒さんで特に楽器のレッスンを受けた経験のない人は、楽譜の必要性をよく理解されていない人がほとんどです。
"楽譜"と聞いて拒絶反応を示す生徒さんも少なくありません。
確かに難しそうなイメージがあるかもしれませんね。

順を追って勉強して行けば、それほど難しくありません。音符も楽譜もただの記号に過ぎないのです。
一度読み方を理解してしまえば、あとはいろんな曲を弾いて慣れて行けばいいと思います。

ギター(ウクレレ)を弾くのに楽譜は必要か、楽譜が読めることの利点、なぜ楽譜が存在するのか。
今回は楽譜の必要性について、私なりの考えを書いてみます。

結論からいうと、楽譜が読めなくてもギター(ウクレレ)は弾けます。ただ読めないと不便です。

どれくらい不便かというと、文字が読めないまま生きて行くのと同じくらい不便です。
少し過度な例えですが、あなたにとって音楽がなくてはならない存在であるなら、楽譜が読めないというこは、文字が読めないのと同じことを意味します。

楽譜が読める利点は、ざっくり言うと3つあります。

利点1『曲を覚えるのが早くなる』
1曲を弾けるようになるまでにかかる時間が短くて済むということです。
楽譜というのは、曲のメロディやコード進行、リズム、構成など、その曲を演奏するための様々な情報が細かく記されています。
なので、楽譜を見ればメロディや伴奏がどんな音からできているか、どんな構造になっているかが手っ取り早く把握することができて、効率よく練習することができます。
もし楽譜なしで曲を弾くとなると、音源を何度も聴き直して、メロディやコードを1音1音根気よく聴き取って、全ての音を覚えきるまでその作業を繰り返さなければなりません。(この作業を耳コピーと言います)
音源からメロディやコードを聴き取るにはそれなりの音感と経験値が必要になるため、初級レベルの人にとってはあまり現実的ではないでしょう。
例え中級レベル以上の人であっても、コード進行を覚えるだけならそれほどではないかもしれませんが、メロディや伴奏の細かなアレンジまで覚えようものなら、音を聴き取るだけでもかなりの時間がかかります。
耳コピーに自信のある人は当然それでもいいと思います。楽譜がなくても曲は弾けます。
ですが耳コピーが得意でない人間にとっては、楽譜を使わずに弾くのと楽譜を使って弾くのとではかかる時間は雲泥の差なんです。
それでも楽譜を読むのが苦手な人にとっては、読譜の勉強をいちから始めるより、自分が弾きたい曲を先生から教わって覚えてしまった方が手っ取り早いと考える人もいると思います。私の生徒さんにもそう考える人は確かに多いのですが、もし自分が弾きたい曲が何十曲もあった場合はどうでしょうか。
人間が記憶できる量には限界があります。根気のある人なら2〜3曲程度は覚えきれるかもしれませんが、何十もの曲を同時に覚えきるなんて到底不可能でしょう。
だから人は楽譜に頼るのです。たくさんの曲を弾くには、読譜力を身につける方が結局のところ近道ということなんです。

利点2『意思の疎通がはかりやすくなる』
ひとりで弾くなら自分だけが理解していればいい話ですが、何人かで一緒に曲を演奏するとなった場合、曲に対する共通認識がないと演奏は成立しません。
短いシンプルな曲なら、演奏前に口頭で確認し合うだけで何とかなることもありますが、何十小節もある複雑な曲では、演奏者の曲に対する認識に少しでもズレがあっては演奏できません。
コード進行やサイズを誤って認識している演奏者がいた場合、他の演奏者と音が合わずに全体の演奏がおかしくなります。(当たり前だ)
アマチュアバンドに多いのが、各演奏者が自分のパートを音源から聴き取って、それを全員で合わせて演奏するという方法です。
この方法では全員が正しく聴き取れているか、理解できているかが分からないうえに、もし認識にズレがあると気づいても、楽譜がなければ意思の疎通が図れずズレを修正できなくなります。
アマチュアバンドの演奏が下手に聴こえるのはこれが原因である場合が多いです。個々のプレイはそれほど下手ではないのに、バンドになると下手に聴こえてしまうのです。
仕事で会議を開く場合、企画書などの書類を使うことで意思の伝達がスムーズになりますよね。それと同じことです。共通の言語を使い、共通の認識を持つことでアンサンブルが成立します。その共通言語と共通認識を形にしたものが"楽譜"なのです。

利点3『再現しやすくなる』
3つ目のメリットは「いつでも演奏を再現できる」ことにあります。
意外に気づかない人が多いかもしれませんが、個人的にはこれが最も大きなメリットだと思っています。
以前は弾けた曲が、時間が経ったことで弾けなくなったという経験はありませんか?
技術が衰えたせいで弾けなくなったわけではなく、時間が経ったために記憶が薄れて弾けなくなってしまうということは誰にでもあることではないでしょうか。
曲を練習している最中や、1曲を覚えて楽しく演奏している時はあまり意識しないかもしれませんが、実は頭の中で覚えた曲が弾けるのは一時的なことなのです。人間は時間が経ったら忘れるのです。
曲を演奏するために必要な情報を記録したものが”楽譜”です。
以前に自分たちが弾いていた曲を、しばらく時間が経った後にもう一度同じように演奏しようとした場合、楽譜があることで正確に再現することができるのです。
因みに私は自分に弾ける内容の曲であれば、100曲でも続けて弾くことが出来ます。
それは楽譜があるから出来ることなんです。100曲を記憶して弾くのは無理ですが、100曲分の楽譜を読んで弾くことは可能なんです。

楽譜が読めるようになることで多くのメリットがあり、いろんな可能性が広がりますが、 逆に楽譜が読めないということは、いろんな場面で不便を強いられ、多くの可能性が絶たれてしまいます。
その結果、音楽を楽しむ機会も失ってしまうのです。

これは長くギター(ウクレレ)を弾いていれば気づくことです。

私の教室では、初心者の人でもギター(ウクレレ)の演奏に必要な最低限の読譜力は身につけてもらえるカリキュラムで指導していますが、読譜力を身につけようとする生徒さんに比べて、読譜を学ぼうとしない生徒さんは非常に上達が遅く感じます。

読譜が出来ないことで、覚えるのが遅いのです。私が伝えようとしていることを理解するのが遅いです。それで上達が遅いのです。

楽譜を読むということは、それほど難しいことではありません。"音符"はただの記号です。"楽譜"はその記号の集まりなんです。練習すれば誰でも読めるようになります。

【備考】
現代の楽譜の表記法を「五線記譜法」といいます。小学校で習っているので、誰でも一度は見たことがあると思います。5本線に白丸や黒丸の音符が並んでいるやつです。 この五線記譜法ができたのが17世紀だと言われています。それ以前は楽器によって表記法が違っていて統一されていなかったのですが、17世紀以降世界中のほとんどの音楽が五線記譜法で表記されるようになったそうです。つまり現時点では、五線記譜法が最も優れた表記法だということになるのだと思います。