ギター・ウクレレ教室 Talking

奈良県桜井市の音楽教室

 

コラム

現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。


上達の早い人、遅い人

音楽教室には上達の早い人、上達の遅い人、普通の人、当然いろんな生徒さんがいます。
これは何処の教室でも同じです。

上達の早い人たちには、必ず共通点があります。
遅い人たちにも、やはり共通点があります。

今回は、上達の早い人と遅い人の違いや、別れるポイントをあげてみます。

しっかりと上達していくための必須条件と思ってもいいかもしれません。
この条件を満たしている人は上達が早い人、満たしていない人は上達が遅い人だということです。

いい演奏家になるには、テクニックを磨くこと、感性を磨くこと、人前でも緊張しないで演奏できるメンタルを身につける、といったレベルの高い話ではありません。

もっと初歩的で、低次元のお話です。

せっかくギターやウクレレを習い始めても、進歩が無ければ楽しくないですもんね。
上達の早い人と遅い人は何が違うのか、両者の特徴を知って、これからの学びに役立たせてみて下さい。

(今回は数が多いので2ページに分けて紹介します。Vol.2も是非読んでみてね。)

1. 練習のやり方を理解しているか

楽器の上達にとって最も重要なことは何か?と聞かれたら、
私は「練習のやり方を理解すること」と答えます。

他のページでも繰り返し言っていますが、レッスンとは、"正しい練習のやり方を学ぶ場"です。

練習のやり方が理解できなければ、家に帰ってから日々の練習ができなくなってしまうので困ります。

なので、私のレッスンでは練習のやり方や注意点を細かく解説します。

生徒さんが理解できるまで、何度も丁寧に解説します。それが私の仕事です。

練習のやり方を理解するのは、簡単なようで結構大変です。
一度に沢山の情報を頭に記憶させなければならないからです。

一度に沢山のことを覚えるのが大変な場合は、メモを取ったり、私の解説を録音したり、工夫が必要です。
ここは生徒さんたちの努力です。

理解できない箇所は自分から質問して解決するべきです。

家に帰ったら、習ったことを忘れないうちにノートにまとめることも必要でしょう。

上達の早い人は、こういったことを当たり前のようにやっています。

学生時代を思い出してみて下さい。授業中に先生の話を一回聞いただけで、全てのテストで100点が取れましたか?
そんな人いませんよね。

私は限られたレッスン時間の中で、正しい練習のやり方をなんとか理解させようと最大限に努めますが、あまり深く理解できないまま帰ってしまう生徒さんもいらっしゃいます。

こういう場合は、レッスン時間中に理解できなかった部分を帰宅してから、ノートを読み直したり録音データを聞き直すなど復習をして、「次回のレッスンまでに自分がやるべきこと」をきちんと理解できるかがポイントです。

正しい練習のやり方が理解できていない人は、次回のレッスンまで何も練習しないか、あるいは間違った練習をしてしまうことになります。

上達の遅い人にありがちなのは、練習のやり方や注意点などの説明を受けて、理解できないことがあった場合でも、「解らない」という意思表示をしないことです。

理解できていないのに、”理解したフリ” をしてしまうのです。

理解したフリをしても、私はその人の表情を見ればすぐに ”フリ” だと分かります。

「解らない」と言い出しにくい気持ちも多少は分かりますが、それでは自分が損をします。

理解できないときは何度でも「解らない」と主張するべきです。そのための個別レッスンなんですから。

仮にどうしても理解できない箇所があったとしても、理解できないことさえ伝えてくれれば、その部分を省いて、その人に理解できる範囲で課題を出すようにしているので、それほど気にする必要はありません。

対して上達の早い人はどうかというと、理解できないことがあった時、必ず「解らない」ことを繰り返し主張してきます。

自分が理解できないことを知ってほしいという気持ちが強いのでしょうね。私はこういう人は学習力とコミュニケーション能力の高い人だと思います。

2. 自分の演奏の問題点に気づいているか

上達の遅い人に必ず共通していることは、自分の演奏の何がいけないのか、どこに問題があるかということに気づいていないことです。

音が間違っているのか、リズムが悪いのか、他の音が聴けていないのか、自分の演奏の何が悪かったのかが解らないのです。

「何が悪かったのか」が解らないので、練習で何を身に付けるべきかが解らないのです。

これは上達の遅い人の典型的な特徴です。

これは楽器に限った話ではないですよ。仕事でも勉強でもスポーツでも、自分の問題点に気づいていない人に進歩はありません。

自分の間違いに気づかなければ、改善のしようがありませんから。

例えば、曲を弾いていてミスをしたとします。
「5小節目のFコードが上手く弾けないせいでリズム崩れて、おかげで6小節目のコードも上手く弾けなかった。自分はもっとFコードの練習が必要です」と、自分の問題点が明確に言語化できる生徒さんは、上達の早い人です。

初心者によくあるミスは、同じコードが2小節続く場面で1小節を飛ばして弾いてしまう、というものです。
初心者の頃は誰でもやってしまうミスですが、ここで重要なことは、自分がミスをしたことに気づけているかどうかです。

例えば生徒さんが伴奏パートを弾いて、私がメロディパートを弾いて合奏する場合、生徒さんが1小節を飛ばして弾くと、当然そこから後はふたりの音が合わなくなるはずです。音が合っていない状態でも平気な顔をして曲を最後まで弾き続けてしまう生徒さんもいらっしゃいます。

問題はミスをしたことではなく、音が合っていないことに気づいていないことなのです。

上手く弾けないのと、問題点に気づけないのとでは、意味が全然違います。

私は常に、模範演奏(楽譜や音源)と生徒さん自身の演奏の何が違うか、どこに違いがあるかを考えさせるように指導しています。

生徒さんがすぐに違いに気づけない時でも、時間を掛けてなるべく自分で気づいてもらえるまで待つようにしています。

どうしても自分で気づけない場合は、こちらから間違いの箇所を伝えることもありますが、あまりに自分を客観視するのが苦手な人には、生徒さん自身の演奏を動画に撮影して、自分で見て確認してもらったりすることもあります。

自分の演奏を動画に撮影して確認するくらいのことは、スマートフォンを使って自宅でも簡単にできることですよね。

「下手糞の上級者への道のりは、己が下手さを知りて一歩目」by安西先生(知ってるかな?)

3. お手本をよく見ているか

これは観察力があるかどうかということです。

上達の早い人たちは、ひとのプレイを観察して技術を盗む力に長けています。

楽器の持ち方や、左右の手の動き、指の形、身体の動きなど、細かい所までよく観察している傾向があります。

逆に、上達の遅い人たちに共通していることは、観察するのが極めて苦手なこと。
というより、観察しようとする意識が足りないように感じます。

見て盗むのが苦手なのではなく、見ようとしていないのですね。

私は何かを指導する場面で、言葉で説明するより実際の演奏を見せた方が伝わりやすいと判断した場合は、「一度私が弾いて見せますので、よく見ておいて下さいね」と言って、生徒さんの目の前で模範演奏を行います。(これはレッスン中よくあることです)

しかし上達の遅い生徒さんはどんな行動を取るかというと、私が演奏している最中、私の演奏などまるで見ようとせず、一生懸命に楽譜を見ていたり、自分の楽器で弦を押さえる練習をしておられます。

これは一体どういうことなのでしょうか。(私の演奏など見る価値もないということでしょうか)

楽譜を見て何かを確認するとか、弦を押さえる練習をするのは帰宅してからでも出来ますが、私の模範演奏はその瞬間でしか見れないものですよね。
先生の演奏を間近で見て学べる貴重な機会をみすみす棒に振ってしまっています。

上達の早い人と遅い人の間には、その時々で「自分は今、何に注力するべきか」を判断する力の差が大きくあるようにも感じます。

あなたは、ギター(ウクレレ)の上手い人が演奏をしている様子を頭にイメージすることができますか?

例えば、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドという音階を弾くとします。
その時に、ギター(ウクレレ)の上手い人がその音階を弾いている様子を思い浮かべることができるでしょうか。

自分が何かを弾きたい時、構え方や、左右の手の動きや、指の形など、上手な人がそれを弾いている様子を頭にイメージできなければ、おそらくそれを上手く弾くことはできないと思います。

楽器を上手く弾くということは、ざっくり言うと「上手い人のマネをする」ということなんです。
楽器の上手い人の弾き方を頭にイメージできなければ、それをマネれるわけありませんよね。

頭にイメージできない人は、上手い人のプレイをよく見ていないということですよね。

レッスン中に私が行う模範演奏の様子を帰宅後も頭に思い浮かべることができない人は、正しい練習ができない可能性が高いということが理解できるでしょうか。

私の教室には、私の模範演奏を黙って見ている人、身を乗り出して見てくる人、「もう一度弾いてほしい」と要求する人、録画して持って帰る人、全く見ていない人、様々なタイプの生徒さんがいらっしゃいます。

私には目標にしているギタリストが何人かいるのですが、その人たちのプレイはYouTubeで毎日のように観ているので、いつも脳裏に焼きついています。
自分が練習する時は、いつもそのギタリストたちのプレイをイメージして弾いています。(一流の演奏家たちのプレイをタダで好きなだけ観れるなんて、なんとありがたいことでしょう)

4. 欠席しないこと

レッスンを欠席しない生徒さんは、何年通っていてもほとんどしません。
よく欠席する生徒さんは、最初からその傾向があって、その後もそれは続きます。

欠席する人って、いつも決まっているのです。
これは何処の教室でも同じでしょう。

生徒さんたちが予約していたレッスンに何かの事情で受講できない場合、教室に欠席の連絡を入れることになりますが、 おそらくその時「準備をして待っている先生に申し訳ない」「レッスン料がもったいない」「やる気のない生徒だと思われないか」など、いろんな心理が働き、罪悪感をおぼえ心の中で様々な葛藤があるではないでしょうか。

しかし、一度欠席するとそのハードルが下がってしまい、二度目からは徐々にその心理が薄れて行き、欠席することに対する罪悪感や心の中での葛藤を感じなくなって行くのではないでしょうか。

本来ギターやウクレレを習うということは、大きな負荷がかかることですよね。

毎週決まった日にレッスンを受け、習ったことを次のレッスンまでに練習し、次のレッスンでまた次の課題をもらい、それをずっと続けて行くのだから、心理的負荷はとても大きいはずです。

レッスンを欠席すれば、その負荷は一瞬軽くなり精神的に楽になるかもしれませんが、一度それをやってしまうと、また心理的負荷を強く感じた時に、簡単に欠席するようになってしまいます。

欠席することが癖になってしまうのです。

特に十分な練習をしていない状態で次のレッスン日が近づいて来た時は、誰でも憂鬱になるものですよね。

これは、宿題をしていないと翌日学校に行くのが嫌になるのと同じです。
もし仮病を使ったりして学校を休むと、その翌日はさらに行くのが辛くなってしまうのをご存じでしょうか。(その結果、不登校になってしまうわけです)

前回の課題に対する練習が不十分な場合、「あまり練習が出来ていないので、しっかり練習してから次のレッスンを受講しようと思います」と言って欠席したり、次の予約を先延ばしする生徒さんが稀にいらっしゃいます。

練習が不十分で、課題を上手く弾く自信がないという理由でレッスンを受講しないという選択をする生徒さんは上達の遅い人です。

というより、これをやってしまう生徒さんは大抵そのまま来なくなってしまいます。

人は期限を設けられることで、目標を達成することが出来るものです。

例えば、小中学校の夏休みの宿題は、毎日1時間ずつ勉強すれば、夏休み期間中(40日間)に全て終わらせられる量に先生が計算して出されているそうです。

40日という期限を設けることで、ほとんどの子どもたちは宿題を終わらせることが出来ますが、もし仮に40日という期限をなくし、好きなだけ自由に夏休みを延長してもいいという制度にしたとしたら、どれくらいの子どもが宿題を終わらせるでしょうか。

果たして40日あっても宿題をやらなかった子どもが、期限を延長することで宿題をやるようになるでしょうか。

例え十分な練習が出来ていない場合でも、レッスン日を先延ばししたりせずに、必ず予定通りの日に受講するべきです。

前回の課題をクリアしないまま次のレッスンを受講しても、次のステップへ進むことは出来ないので、無意味に思えるかもしれませんが、レッスンを受けることで、先生の演奏を間近で見て音楽に触れる機会を持つことによって、下がっていたモチベーションをもう一度取り戻すことが出来る可能性が出てきます。

練習が不十分なせいで受講する意欲が湧かないという理由で欠席すると、練習に対するモチベーションはさらに下がってしまい、その結果その次のレッスンも欠席せざるを得なくなってしまいます。そしてズルズルとそれを繰り返し、場合によっては二度と受講できなくなってしまいます。

上達の早い生徒さんほどそのことを理解していて、例え練習の進捗がどうであろうと「決して欠席しない」と心に決めている生徒さんだったり、 何かの事情で遅刻してしまい、残り10分程度しか受講できないという場合でも、欠席せず受講しに来る生徒さんもいらっしゃいます。

たった10分でも受講するのと欠席するのとでは、その後のモチベーションはきっと変わってくるはずです。

レッスンを欠席することは想像以上にリスクがあるのです。

度々欠席を繰り返している生徒さんで、上達の早い人など私は見たことがありません。

5. 解らないことが、解っているか

あなたは自分に解らないことがあることを自覚しているでしょうか。

ギターやウクレレを上手く弾くために必要なことを、何もかも全て完璧に理解できている人などいないはずです。そんな人は習う必要がありません。(私にも理解できないことは沢山あります)

生徒さんたちは習った内容の中に、何か理解できないことがあった場合、「理解できていない」という自覚がなくてはなりません。

また、覚えていなければいけない知識を覚えられていない場合、それも自覚していなくてはなりません。

私はよく生徒さんに、こんな問いかけをすることがあります。

「この教室に通い始めてから今日までの間に習った全ての内容を100とした場合、あなたは現時点で何%を習得できている(理解できている)と思いますか?」

自身の主観でおおよそ何%くらいかを考えるだけなのですが、この問いかけにはっきりと答えられる生徒さんは少ないです。

「以前のレッスンでこんな事を習いましたが、家で勉強してここまでは理解できたのですが、この部分がまだ理解できません。だからここをもう一度教えてください」と言ってくる生徒さんは、上達の早い人です。

これは頭の中が整理できている証拠です。

自分が何を習って、何が理解できていて、何が理解できていないか明確に分かっていれば、理解できていない部分が理解できるのも時間の問題です。

習って直ぐに理解できなくても、帰宅してから復習しているうちに解らないことが明確になればそれでいいのです。

反対に、「前回のレッスンで解説した内容に、何か解らないことは無かったですか?」と私が尋ねても、「ここが解らないです」と、はっきり言えない生徒さんは上達の遅い人です。

自分が「何が解らないのか」が解っていないからです。
頭の中が整理できていない状態ですね。

自分に解らないことがあると自覚はしているが、何が解らないのかが上手く言えないという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。(私もギターを習っていた頃はよくありました)
この場合は、理解できてない部分を明確にしてもらえるよう、私が誘導していきます。

学びにおいて重要なことは、自分が「何が解っていないのか」を明確にすることです。

日々練習に打ち込んでいれば、必ず何かしらの疑問が出てくるはずです。

練習(勉強)すればするほど、疑問は出てくるものです。
そして、その疑問を解決するのもやはり練習(勉強)なのです。

よく練習している人ほど、多くの疑問を持っていて、常に答えを探しています。

最も上達の見込みのない人は、「何も解っていない」という自覚がない人です。

このタイプの人は全く練習していない(勉強していない)か、ほとんどしていない人です。

例えば、あなたがある目的地を決めてドライブに出かけたとします。
目的地に向かう道中、道に迷ってしまいました。
しかし地図を使って目的地までの道を探し出し、無事に目的地にたどり着くことができました。

これは、あなたが「ドライブに出かける」という行動を起こした事で、道を知らない自分に気づき、地図を使って解決できることを学べたわけです。
もしドライブに出かけていなければ、地図を使って解決できるという経験が得られなかっただけでなく、道を知らない自分に気づくことさえなかったはずです。

人は自ら行動することで、自分に足りないものがあることに気づき、その問題を解決する方法を考え始めるのです。

何も行動しない人は、問題に直面する機会もないので、自分に解らないことがあることにも気づいていないのです。

つまり何の疑問も持っていない人は、何も行動していない証拠なのです。

上達の早い人、遅い人 Vol.2へ続く

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西沢恭輔